2020年5月9日土曜日

野生への手引き



おはようございます。今日の本は、ワイルドへの誘いです。いかがでしょうか。

『自分の力で肉を獲る 10歳から学ぶ狩猟の世界』千松信也/著 旬報社 (2019/12/25)

〇 本の帯に、<無人島に漂着しても、この本さえ読んでおけば肉にはこまらない! 猟師・千松信也の「野生への手引き」>とあります。

う~ん、びみょう~な。今時無人島に漂流し、孤立無援で生き延びねばならぬ事態を想像する人は、あんまりいませんね。だけど、相次ぐ地球規模の自然災害やコロナ禍に直面する今、自らの力と知恵で困難を切り開く、いわば野生のタフな知恵と実際的なサバイバル能力を身に着ける必要を感じている人は少なくないかもしれません。とにもかくにも生き延びよう、です。

小学生の著者は、『十五少年漂流記』や『ロビンソンクルーソー』から、無人島で暮らすための衣食住、中でも食に関心をもつ。米や野菜は何とか自給できそうだと思えたが、肉の問題は解決がつかず、漠然と猟師への憧れを抱く。「野外遊びも、図書館で本を読むことも」両方とも好きだった少年時代。好奇心をかきたてる本との出会いが素敵です。(←ココ、注目!)

京大生となった著者は、アルバイト先で狩猟名人と知り合い、少年の日の夢が呼び覚まされ、名人の教えを受け、猟師の道を歩むことを決意します。

猟に出て、獲物を仕留め、食べ、利用するまでの過程が、たくさんのカラー写真とイラストを交えて、とてもていねいに語られています。

まずは山に入り、動物の痕跡を探すことから。けもの道を動物の気持ちになって歩く。行動習性を見極め、罠を仕掛ける。銃は使わず、浅い穴を掘り、ワイヤーと小枝などを用いる伝統的な罠です。仕留めた動物は苦しめぬよう素早くトドメを刺し、血抜きをして内臓を取り出す。次は解体。解体には人手が必要で、仲間たちが集まる。慎重に部位ごとに切り分け、保存する。そしていよいよ待ちに待った調理。美味そうなレシピの数々。動物の命を考えながら、ありがたく食べます。骨はスープに、皮はなめして利用します。

狩猟は遊びではなく、獲物は山からのいただきもの。一つとして無駄にはしません。著者は、自分と家族、仲間と分け合って食べる分しか獲りません。

そうですね。私たちはほかの生き物の命を奪い、血肉を食らって生きているのですよね。そして、動物が元気に暮らすには豊かな山が必要だということも、伝わってきます。

この本はコンセプトが子ども向けなので、文字の大きさや言葉遣いが子ども向けのモードになっています。だけれど、そこで発信している情報はけっして子どもの世界にとどまるものではありません。むしろ、YAの皆さんに手にとってもらいたい本です。ハッとするエピソードに出会いますよ。