
おはようございます。今日は、高3の平次君、前回(5/15)に続き、2度目の登場です。平次君、ありがとう!平次君が「アメリカ文学として真っ先に思い浮かべる」―『ガラスの街』の紹介、お楽しみください。
『ガラスの街』ポール・オースター/著 新潮文庫(2013/8/28)
ポール・オースターという作家はアメリカ、ニューヨーク在住の作家でありまして、主にミステリー小説を手掛けている現代の生きる巨匠であります。存命中の作家で、しかもアメリカの作家で更にはミステリーで僕が好むのは大変稀有なことでありまして、僕にとってはヘミングウェイよりフォークナーより彼の作品、取り分け『ガラスの街』をアメリカ文学として真っ先に思い浮かべます。それほどこの作品は僕に衝撃を与えたのです。
「そもそものはじまりは間違い電話だった。真夜中にベルが三度鳴り、向こう側の声が、彼ではない誰かを求めてきたのだ。ずっとあとになって、自分の身に起きたさまざまなことを考えられるようになったとき、彼は結局、偶然以外何ひとつリアルなものはないのだ、と結論を下すことになる。」
この小説の冒頭部分です。どうでしょうか、もうこの時点でオースターの世界に入り込んでしまった人も多いのでは、と思います。この小説を大雑把に説明すると、ミステリー作家の主人公が人違いで、ある事を依頼されます。それは出所した男が襲いに来ないように見張っていて欲しいというものでした。主人公はお金の為に本当の身分を隠してその男の行動を一日中監視することになりますが、男の行動と中の人間が全てがおかしいと気づくことになります。
この小説の面白いポイントは柴田元幸氏が訳しているという事もありますが、物語全体に焦点を当てると大きく分けて三つあります。まず一つ目は細かい風景描写です。ニューヨークが舞台の小説ですから摩天楼や、地下鉄、セントラルパークが登場します。その光景が一瞬にして明瞭に脳内に浮かぶように書かれています。まるで自らもニューヨークに迷い込んだよう。二つ目は作者の圧倒的な知識でしょう。尾行の対象になる男は元有名校の大学教授である為、男の情報を知る為に主人公はライブラリーへと赴き彼の著作本を調べ上げます。その本に記述されているバベルの塔や言語の発祥についての論文がとても興味深いのです。そして三つ目は圧倒的に深いストーリーです。一番最後に何故、あの人が出て来たのか、何故、あんな事を言ったのか、というのが分かればもう鳥肌ものでこの物語をすぐさま再読せざるを得なくなるでしょう。
この物語の初めにこういった一節があります。
「ニューヨークは尽きることのない空間、無限の歩みから成る一個の迷路だった。」
この言葉は『ガラスの街』の主人公とそして読者がこれから歩む道を表した言葉でもあるのです。
どうでしょうか、海外旅行に行けない今『ガラスの街』を読んでニューヨークという名の迷宮に入り込んでみてはいかがでしょうか。