2020年5月15日金曜日

幸せの形


おはようございます。今日は、高3の平次君が、桜木紫乃さんの小説『蛇行する月』を紹介します。蛇行する月、不思議なタイトル、そして、素敵な表紙ですね。どんな小説なんでしょう。

『蛇行する月』桜木紫乃/著 双葉社 (2013/10/16)

〇 僕は良く”幸福”について考える事がある。あなたはどうですか?そう云う問題について人々は度々考える事がある様に思う。今の時分、本当の”幸福”について考える時間も増えたのではありませんか?少なくとも多くの日本人は幸せと云えば云えてしまう毎日を過ごしてしまう訳でありまして、それにより時として苦しくなる時もあります。果たして我々が命を削ってまで追い求める”幸福”の正体はなんでしょうか?桜木紫乃の『蛇行する月』は我々読者に一つの”幸福”の形を提示してくれました。

『蛇行する月』は六つの物語で成ったオムニバス形式の小説です。

須賀順子と言う女性は高校卒業後、小さな駄菓子屋に就職するが妻子持ちの男と駆け落ちし東京に逃げる事になった。それから各地を転々として結局東京の寂れた郊外で小さなラーメン屋を営む事になる。幸せとは言い難い人生を生きた彼女は何時でも胸を張って「幸せだ」と言い切る。そんな彼女の幸せの形に直面した六人の女性は彼女の幸せに戸惑いを隠せずにいる。そして自らの幸福と比べ本当の幸福とは一体何かを考える。

この物語はヒーローなど出て来ませんし、奇跡的な救いもありません。そして美しいラブロマンスも書かれていません。しかし我々が日々過ごしている生活というのも、物語の中の様に確実に救いがあるわけでもありません。もしかするとあるのかも知れませんが、小説や映画の様に第三者が見て面白いものではないでしょう。無様で不格好ながら毎日をただやり過ごして行く。この物語に登場する六人の女性達も我々と変わらない日々を過ごしています。それぞれ抱える問題があったり面倒くさい事柄に遭遇したり。然しそれでも日々を生きています。

『蛇行する月』そんな我々の生活を適切に表現している一節がありました。

「湿原を一本の黒い皮が蛇行している。うねりながら岸辺の景色を海へと運んでいる。曲がりながら、ひたむきに河口へと向かう。みんな、海へと向かう。川は、明日へと向かって流れている。」

”幸福”の形というものは様々で、それはやはり他者が決められることではないと改めて思いました。

僕は『蛇行する月』を読んで、幸福を更に追い求める自由こそが本当の幸福であると感じました。
本書を読んで、順子が選んだ、そして六人の女性が選んだ幸福を知ればあなたの中の形になっていなかった本当の幸福が浮かび上がってくるかも知れません。ぜひ読んでみてください。