おはようございます。17期生の山口洸さんが、6/8、6/27に続き、みたび寄稿してくれました。洸君、ありがとうございます!今回は、まさに夏休み (自森は明日8/1~) 直前にスペシャル版3冊。どうぞ、お楽しみください。
〇 梅雨があければもう夏ですね。まもなく皆さんも夏休みに入ることでしょう。
私が小学生のころ夏休みの宿題に読書感想文というものがありました。夏休みも終わりに近づいたある日、宿題のために角野栄子さんの「魔女の宅急便」という本を手に取りました。前の晩にテレビで宮崎監督の映画「魔女の宅急便」を放映していて、結末が分かっているなら多少ななめ読みしても大丈夫という安易な考えからでした。原稿用紙を文字で埋め、登校日に忘れないように食卓の上に出しておきました。翌朝起きてみると、そこには父により赤入れされ3行に要約され無残な姿の読書感想文がありました。そんなわけで私は夏休みの宿題が嫌いです。特に読書感想文には敵意すら抱いています。
さて今回は夏を舞台にした少し不思議な小説を3冊紹介しようと思います。
「ペンギンハイウェイ」森見登美彦/著 角川文庫
これは小学四年生のアオヤマくんが体験した一夏かぎりの不思議な現象についての物語である。それは街にペンギンが出現することから始まり、歯科医院で働く仲のよいお姉さんのおっぱいを経由して、<海>が溢れるところまで発展します。この次々に発生する突拍子もない謎をアオヤマくんは仲間と協力しながら解き明かそうとするのだ。
なにせこのアオヤマくんは只者ではない。たくさん本を読み、毎日の発見をノートに書きとめ、疑問に思った事象をとことん研究する。夏休みの宿題を最終日にあわてて片付けるようなことは絶対にない。計画性があり、些細なことで怒らず、さらには「寡黙な人」になるつもりなのに無駄にしゃべりすぎたと反省したりする。まったくナマイキだ。
森見さん小説は不思議な光景を織り交ぜるのが抜群にうまい。登場人物のウィットの効いた会話を楽しんでいると、いつの間にかありふれた日常からとんでもない世界に迷い込んでいる。それはまるで夏の陽炎のようである。
「夜市」恒川光太郎/著 角川ホラー文庫
私が夏と聞いて思い浮かべるのは、どこまでも連なるまつりの屋台である。日が暮れると裸電球の光で全てがキラキラと輝き、見慣れた日常はあやしい世界に一変する。その熱に浮かされたように、なけなしの小遣いであれこれ買うのだが次々に欲しいものが出てくるから不思議だ。しかし翌日、太陽の下であらためてみると、なぜこんなものを欲しがったのか分からないガラクタをばかりだから狐にでも化かされた心持ちになる。
この物語に出てくる夜市はさらに妖しく魅惑的だ。そこでは何でも売っている、なぜならその夜市はこの世のものではない。問題はどうやって買うかということである。何も買わなければ夜市から帰ることはできない。まるで熱帯夜にみる悪夢のような物語である。
「夏への扉」ロバート・A・ハインライン/著 早川書房
ダンの愛猫ピートは冬になると家中の扉を開けてくれとせがむ。家にある扉のどれか1つが夏へ通じていると固く信じているのだ。そしてダンもまた胸のなかには冬があり、夏への扉を探し続けていた。
こんな書き出しから始まるこの物語は1956年に発表されたタイムトラベルを扱った初期の傑作SF小説の1つである。この物語のプロットはとても上手くできていて、のちに作られるタイムトラベルを扱った小説や映画に大きな影響を与えた。
しかし私がこの小説を紹介するのは、ダンと雄猫ピートの生き方がカッコいいからだ。裏切られ、傷つき、さまざまな困難が降りかかるが、軽口をたたき皮肉を忘れず道を切り拓いていく。彼らは自由を心から愛し、自立を尊重する。その姿はテンポのよい会話と相まって読んでいてとても痛快だ。夏の夕立を眺めながらボンヤリと読みたい一冊である。
最後に小説から少しだけ文章を借りようと思います。
“かつてはパートナーと組んだ経験もある。だが、畜生、何度火傷しようと、ひとを信用しなければならないときがあるのだ。そうしなければ、洞窟の隠者になって片目を開けたまま寝るはめになる。安全でいる方法なんてなにもない。生きていること自体が、そもそもとても危険なことなんだ…死に至る危険。”
「夏への扉」より。




























