2020年7月12日日曜日

家族の再生の物語


おはようございます。今日は、妹の化学物質過敏症を治すために、浦和から南アルプスのふもとに引っ越した一家族の姿を、中学生の兄の目線で語った物語です。ご一読ください。

『ずっと見つめていた』森島いずみ/作 しらこ/絵 偕成社

(えつ)の一家は、妹つぐみの化学物質過敏症が治らないため、両親は、自然な環境と特別な学校のある場所を探し、埼玉県の浦和から富士山の見える山梨県に引っ越します。都会から南アルプスのふもとへと、学校、塾、ゲームを繰り返す日々を送っていた越は、複雑な思いで地元の全校生徒16人の小さな中学校に通います。

「里づくりの会」の紹介で昭和の時代にスリップしたような家を借り、母はやりたかった自然食のお店に改修しました。

豊かな自然は、つぐみにとって心身共に元気を与えることとなりました。越は、なかなか気持ちを整理できないまま、それでも田舎での暮らしを丸ごと受入れていきます。同級生の結衣や慎太郎との出会い、両親の生き方や思いに気持ちを馳せることで、自分の今とこれからについて考えることができるようになっていきます。

母親は、地元の食材を使った自然食の食堂をオープンさせますが、この地域の有力者からのいやがらせにあい、お店はなかなか軌道に乗りません。地元にうけいれてもらうには難しいものがありました。

埼玉時代の親友・直登から夏期講習にさそわれた越は、同じ中学に通う結衣と塾のセミナーに参加しましたが、つぐみがマムシにかまれたという緊急の連絡が入り、急きょ家にもどります。この事件をきっかけに大きな変化が起こります。

中学生の長男・越の目線で話が進んでいく、一家の再生の物語。

最後の場面、つぐみがじっと朝顔の開花を待つ顔、それを見ながら妹の時間の流れに気づく越の姿が印象に残ります。

2020年7月11日土曜日

いっぽんのせん


おはようございます。今日も昨日に続き絵本の紹介です。今回は、文字が読めない子にもお話の内容の理解を助けるピクトグラム(ことばの意味を絵や記号で表現した絵文字)付きの絵本です。どうぞ、ご覧ください。

『いっぽんのせんとマヌエル ピクニックのひ』マリア・ホセ・フェラーダ/文 パト・メナ/絵 偕成社(2020/1/11)

マヌエルは、線が大好きな自閉症の男の子です。

一日の生活が一本の青い線をたどって描かれます。

町といなかをつなぐ一本の線、道をたどってマヌエルは家族といっしょに車でピクニックに出かけます。マヌエルは動くものも大好き。鳥やちょうちょ、ヤギや馬、ウサギ、カブトムシと触れ合います。二人の弟と木々の間でかけっこをし、顔にさわる風の感触や風の音を感じ、川を流れる葉っぱ、星や月など自然の中で満たされ、自分の世界を広げていきます。

シンプルで分かりやすい絵と文章にピクトグラム(ことばの意味を絵や記号で表現した絵文字)がついて文字が読めない子にもお話の内容の理解を助けます。

みなさんも、ピクトグラムを文章や絵と見比べ丁寧に読むと、マヌエルの気持ちによりそってピクニックに出かける楽しさを感じられますよ。

前作『いっぽんのせんとマヌエル』(2017/8/29)の後書きに、
「このひろい世界には、いろいろなひとがくらす、さまざまな考え方があり、たくさんの感じ方があるのだとマヌエルのような子どもたちは私たちに教えてくれている」
と書かれていました。

みなさんも、この2冊を手に取って読めば、本当にその通りだなあと思うでしょう。

前作『いっぽんのせんとマヌエル』はチリの絵本でした。自閉症の男の子、マヌエルと作者が出会ったことで、生まれた絵本です。線が大好きなマヌエルが、線をたどって学校へいって家に帰るまでを、シンプルな言葉と絵で描いていました。この作品もまた、日本版は文字を読みにくい人たちのために、理解を助けるピクトグラムがついていました。続篇となる本書は、実は日本のオリジナルでの刊行です。1巻目の刊行時に、プロモーションのために来日した作者と画家が、日本の保育園でワークショップをしました。そのときに日本の子どもたちから受けた刺激から、生まれた絵本だそうです。

ぜひ、一度、手に取ってみてください。

2020年7月10日金曜日

毎日うっとり眺めている絵本


おはようございます。6/6に続いて1期生の須藤倫子さんが登場。ご寄稿、ありがとうございます!須藤(旧姓・小迫、通称:ちゃこねえ)さん。皆さん、どうぞ、ご一読ください。

『ジュリアンはマーメイド』ジェシカ・ラブ/文・絵  横山和江/訳 サウザンブックス社 (2020/6/22)

ジュリアンは小さな男の子。おばあちゃんに連れられた電車の中でそれは素敵な「人魚」たちに出会います。なんてきれいなんだろう。あっという間にジュリアンは想像の海へ。魚たちに囲まれ、自分も髪の長い人魚になって心ゆくまで海の中を堪能するジュリアン。
帰宅後、鏡に向かい、レースのカーテンその他でぼくも人魚に大変身! 

するとおばあちゃんはジュリアンを外へ連れ出します。もっと人魚ごっこしてたかったのにな。ところが行った先にはあの人魚たちはじめ、色とりどりの人たちがたくさんいて、みんなで大行進。もちろんジュリアン人魚もね。

LGBT本のサウザンブックス社から出た絵本で、作者の友人のトランスジェンダー女性がヒントになっているとのことなので、ジュリアンが見とれるお姉さんたちは多分トランス女性で、最後のパレードも毎年コニーアイランドで行なわれているものらしいのですが、そこまで読み取らなくても、自分がきれいだと思ったものを心からそうだと言えること、その気持ちをこんな風に表現できることは素敵だねって、そういうお話。

川原泉の短編コミック「月夜のドレス」が気になった人はきっと気に入るんじゃないかな。絵がとびきり良いので、色づかいを見ているだけでもしあわせになれます。今年クラウドファンディングで買って以来、私は毎日うっとり眺めております。今は書店でも買えるし図書館でも読めますよ。ぶっきらぼうに見えて愛情たっぷりのばあちゃんもいい味出してます。


自由の森に昔はあった水泳部(顧問は鬼沢さん!)の初代部長からのおすすめ本でした(私にもマーメイドと呼ばれた夏があったんですよ)

2020年7月9日木曜日

僕が家庭科教師になったわけ


本日の図書館ブログは、今年度から、「人間生活科」の高3の授業を担当される教員の小平陽一さんの登場です。なぜ、小平さんが「家庭科」を選ばれたのか。「家庭科」「人間生活科」という教科の奥行も見えてきます。どうぞ、ご一読ください。

『僕が家庭科教師になったわけ つまるところの「生きる力」』小平陽一/著 太郎次郎社エディタス(2016/2/10)

皆さんこんにちは。今年から、人間生活科を担当することになった小平です。僕は、元は化学の教師、化学を18年間教えた後、家庭科に転科しました。

家庭科というと、女子の教科とか、料理・裁縫とか思われがちですね。途中までは確かにそうでした。しかし、1994年(平成6年)から高校の家庭科(中学はその前年から)が男女共修になりました。家庭科は、そこから大きく変わったのです。僕はその年に女子大に通い、家庭科の免許を取り、翌年から家庭科の先生になったのです。

なぜ家庭科に?
それはこの本を読んでのお楽しみ。

ですが、ざっくり言いますと、自分が目指してきた現代科学というものに疑問を感じ始めたことが一つ。水俣病をはじめとする公害の問題や、原発や原子爆弾、さらには環境問題に関心を持ち始めてから、科学の二面性に危うさを感じ始めたのです。市民の立場の科学や生活科学というものが必要だな、と思ったのです。その時出会ったのが家庭科でした。家庭科は人々の暮らしを大事にする教科です。それは総合科学であり、生活の哲学だと思っています。

もう一つの理由は、共稼ぎで二人の子育てに悪戦苦闘する中で、生活技術の未熟さを思い知らされたことでした。男も家事育児を担い、共に家庭生活に責任を持つべきだと思ったのです。でも本当のところは、男頭で育った僕が、バトルをしながらも妻に厳しく鍛えられ、徐々に成長していった過程の物語がこの本です。

ぜひ、読んでみてくださいね。

2020年7月8日水曜日

ファストファッションがなぜあんなにも安いのか


おはようございます。今日は、7/3に続き2回目の登場、2期生の宮崎詠子(在学中の通称:あきら)さんです。ご寄稿、ありがとうございます。皆さん、どうぞご一読を!

『このTシャツは児童労働で作られました。』シモン・ストランゲル著 枇谷玲子訳 汐文社

ファストファッションがなぜあんなにも安いのか考えたことがあるかどうか。Tシャツだけじゃなく、チョコレート、サッカーボール、レンガ、コーヒー……。

おかしい。

それは小さな子どもが、真っ暗な所に閉じ込められて食べ物もロクに貰えず、学校にも行けず、朝から晩までミシンを踏んでいるからかもしれない。

「奴隷」、信じられないかもしれないけれど、今でも世界の15千万人の子どもたちが強制労働させられている。

これはノルウェーで話題になった本。

バングラデシュのリーナは朝から晩まで、自分では着ることのできない服を作っている。ノルウェーのエミーリエは友達と行ったファストファッションのお店でお店の人の目を盗んで商品タグに「このTシャツは児童労働で作られました」と書かれたシールを張っているのを目撃した。その時からエミーリエの生活と価値観と考え方と行動が変わった。

日本にいる私たちは関係ないと思う? 

そうじゃない。もしかしたら今、あなたが着ているTシャツが、履いている靴が、食べているチョコレートが、バナナが、学校にも行かせてもらえない子どもが作った物で、だけれど「安くてラッキー」と思っちゃうかもしれない。

安いのが悪いと、言いきれない。でも、その安さの訳を知って欲しい。その知る一冊にしてほしい。15千万人の子どもたちが、太陽の元で遊んでごはんを食べて学校に行って勉強して、将来について夢を語れるように、これから買い物をする時に、ちょっと考えて欲しい。

2020年7月7日火曜日

働く上で大切な、ワークルールを簡潔に解説


おはようございます。今日は、コロナ禍の今だからこそ、知っておきたい働く上でのルールを分かりやすく解説した本です。今回は、「2 アルバイト編」ですが、本シリーズは、「1 ワークルールってなんだ?」「3 就活・就職篇」「4 ワークルールでつくる豊かな社会」の4巻です。監修は、卒業生の保護者で自由の森でも何回か講演された上西充子(法政大学キャリアデザイン学部教授)さんです。どうぞ、ご覧ください。

『こんなときこそワークルール!アルバイト編 〈10代からのワークルール:これだけは知っておきたい「働くこと」の決まり2〉』上西充子/監修 旬報社
 
コロナ禍、学生さんのバイトは軒並み無給の自宅待機を言い渡されたそうです。この中には家庭の経済環境により働かないと生きていけない学生もいるのに。一方的に解雇を告げられた学生さんもいたのです。
 
働く理由は人によって様々ですが、正社員でもアルバイトやパートでも同じ「労働」に違いはありません。人が労働をしたら対価として賃金が支払われる。しかし、この対価は実は簡単なことではありません。法律や制度によって守られているから、こそなのです。

本書は、働く上で大事な、そのワークルールを簡潔に解説している本です。
 
この本のはしがきに、―アルバイトであっても、雇用されて働いている以上は「労働者」であり、労働法の対象です。(中略)「学生だから」ということは関係なく、お互いにルールを守らなければなりません。―と。アルバイトだからといっても法できちんと守られていて、当然、権利があるということが明言されています。
 
例えば、「地域ごとに最低賃金が定められている」や「学業が優先で無理のない働き方を」「仕事内容や条件については、書面でもらう権利」などの基本的な事柄で、それらが、分かりやすくQ&A式で解説されています。
 
また、「勝手にシフトを入れられる」「仕事中のうっかりミスに罰金」「アルバイト中の怪我に治療費は?」「セクハラ・パワハラ」と、身に迫る、具体的な事例がどんどん出てきます。

フランチャイズで開業して利益を上げるので精一杯で、労働法の概念が欠落し暴走してしまう雇用主。だからこそ、雇用される側がアルバイトでも権利や法で守られていることをしっかり理解していなければと分かってきます。
 
コロナ禍の今、だからこそ、このワークルールの存在がより〈リアル〉になってきています。

2020年7月6日月曜日

うまれたよ!シデムシ


おはようございます。今日は、元同僚の理科教員、現「生きもの写真家」の安田 守さんの作られた、とても興味深い写真絵本です。『うまれたよ!モンシロチョウ』『うまれたよ!アゲハ』『うまれたよ!アリジゴク』『うまれたよ!オトシブミ』『うまれたよ!ナナフシ』に続く、最新作。どうぞ、ご覧ください。

『うまれたよ!シデムシ ~よみきかせ いきものしゃしんえほん39~』安田 守 写真・文 岩崎書店

《安田さんご本人のコメントから》
「シデムシと聞くとオオヒラタシデムシあたりを思い浮かべる方がいるかもしれませんが、今回取りあげるのはモンシデムシ(ヨツボシモンシデムシ)、小動物の死体を埋葬して子育てをするシデムシです。

興味深い生態をもつモンシデムシは以前から取り組みたいと思っていたテーマでした。ところが実際に取り組み始めると、わからないこと、うまくいかないことが次々に出てきます。

モンシデムシは研究でよくとりあげられてきた虫なので、基本的なことはわかっているだろうと思っていたのですが、文献を見てもわからないことが意外に多い。このシリーズは幼虫の成長がメインテーマなのですが、「成虫による子育て」が書かれたものはたくさんあるのに「幼虫の育つさま」はどこにも書かれていなかったり。

で、トラップかけて、飼育して、データを集めることからはじめて、幼虫の成長の場面を想像し、撮影する方法を考える。そうやって試行錯誤を繰り返していると、あるとき見たことのなかった姿に出会うことができる。それを写真に撮る。場面がつながって物語になって本ができていく。

こうやって書いていると、親シデムシの口元に向かって競い合うように伸び上がる幼虫の姿や、親が発する「チーチー」という鳴き声を思い出します。

今回は編集途中でコロナが流行しはじめ、本になるのはいつになるだろう、できるのだろうかと心配しましたが、リモートワークという制約の中で進めてくださった編集者さん、出版社、印刷会社の方々のおかげでここまでたどり着きました。手にとって見ていただけたらうれしいです。よろしくおねがいします。」

本書は、驚きの連続です。見開きごとの写真が興味をかきたてます。小鳥くらいの大きさのヒミズ(モグラの仲間)の死体を子育ての住処と餌にするためにずるずると引っ張っていく小さな一匹のシデムシ。地面に穴を掘って埋め、毛を取り除き、肉の団子に作り変えてしまいます。産み付けられた卵から幼虫がはい出し肉団子の上で立ち上がり、親シデムシが吐き出すスープを何度も何度も食べます。その時に親は「チーチー」と鳴きながらスープを与えているのですね。食べたらうんち。肉も食べるようになった幼虫のお尻の先から出る泥水のようなうんちも初めて見ました。すごいなあ。そして、ガラスのように透明なサナギの美しさ!何度も何度も繰り返して見てしまいます。