2020年12月8日火曜日

オランウータンに会いたい

おはようございます! 本日は、

『オランウータンに会いたい』久世濃子/著(あかね書房)です。

私たちは、スナック菓子、インスタント食品、レトルト食品に使われている,植物油脂「パーム油」を作るため、森を伐採しています。

実は、この森が、オランウータンの住む場所なのです。そこにある樹木がオランウータンの食べ物の実がなる木なのです。

だとしたら、オランウータンは、今、どのような状況においこまれているのか、私たちの身の回りに溢れた上記の菓子・食品類を思い浮かべながら想像してみてみましょう。

オランウータンとは、今や、私たちにより、絶滅の危機にある大型類人猿です。

通常ならば、メスは、15歳ぐらいで最初の子を産み、平均7年に1回、1頭の子どもを産み、それから、死ぬまで(寿命は60歳ぐらい)子どもを産み続けます。(それにも、関わらず。・・・)

下の子が産まれると上の子は、ひとり立ちします。

ちなみに、オランウータンは、 昼行性霊長類で唯一の単独性なので、 母親は、ひとりで子どもを育てるそうです。

オランウータンは、じっと長い時間動きません。声を出さないので、オシッコ、ウンチのにおいをたよりに探し研究をして、著者は20年近く!が経ったそうです。

何故、続けられたのでしょうか。

インドネシアに生息するオランウータン。熱帯雨林保護のシンボルになっているものの、野生での行動はほとんど明らかになっていませんでした。長い間オランウータンを追い続ける著者は、時には20メートルを超す巨木に登り、時には夢中で追いかけてジャングルで迷子になりながら探求してきました。

著者は、オランウータンの思慮深い目!に魅せられ続けたのです。

本書を手に取ると、今までは、さほどオランウータンに関心のなかった人も、魅力的なフィールドワークの記述を通して、ぐんぐん「オランウータンに会いたい」という興味が湧いてくると思います。そして、この大型類人猿について知りつつ、やはり、私たち人類の今後にも思いが及んできます。ご一読を。

2020年12月7日月曜日

影を呑んだ少女

おはようございます!本日は、

『影を呑んだ少女』フランシス・ハーディング/著(東京創元社)です。

英国、17世紀、ピューリタン革命を背景に、自らの力を精一杯使って、味方を増やし、たくましく生き抜いていく少女の姿を描く、ゴシック・歴史ファンタジーです。

1640年代のイギリスが舞台、当時のイギリスは内乱の真っ只中、その激動の時代に巻き込まれながらも、懸命に生き抜こうとするのは、主人公のメイクピースです。

幽霊が憑依する体質のメイクピースは、暴動で命を落とした母の霊を取り込もうとして、死んだクマの霊を取り込んでしまいます。クマをもてあましていたメイクピースのもとへ、会ったこともない亡き父親の一族から迎えがきます。実は、父は死者の霊を取り込む能力をもつ旧家・フェルモット家の長男だったのだのです。

彼女の持つ「霊を取り込む(憑りつかれる)」能力が本書の重要な鍵となっています。しかし、彼女以外の登場人物は、霊ではなく、政治思想や伝統などにとりつかれているのです。

過酷な状況下で葛藤し、兄を救おうと邪悪な一族に立ち向かう勇気。自分が囚われていた想いに向き合い、運命を切り開いていく強い意志で、彼女に憑依する秘密の友達や謎めいた医師らと共存するように困難と危険を乗り越えながら奮闘し、自由を求め成長するメイクピースが魅力的です。

「あたしはなにももってないけど、でも、あたし自身をもってる」

人間の持つ知恵や勇気、諦めない気持ちが伝わってきます。ご一読を。 

2020年12月6日日曜日

ハナコの愛したふたつの国

こんにちは!本日は、

『ハナコの愛したふたつの国』シンシア・カドハタ/著(小学館)です。

ハナコの家族は、ロサンゼルスでレストランを経営して暮らしていました。しかし、第二次世界大戦が始まり、11万人もの、殆どの日系人が収容所に入れられ、ハナコの家族も収容所で困難な暮らしを余儀なくさせられました。両親は、終戦後アメリカ国籍を放棄し、 日本の祖父母の所に身を寄せることにします。

日本は、ハナコにとって未知の国です。ハナコたちは、すべてをなくして、日本に降り立ちました。ハナコたちを待っていたのは、敗戦まもない荒れ果てた大地です。広島の郊外の貧しい農家での祖父母との暮らしは、着るものも食べるものにも事欠き、なんとか「生き延びる」ことが切実な日々でしたが、優しい祖父母に可愛がられ、かけがえのない家族団らんを過ごします。

全編にちりばめられているのは、家族三世代の強い絆と、人が生きていく上での『希望のありか』。そして、切なく深い思いです。・・・

日系米国人のハナコが終戦後、祖父母のいる広島に父母と帰りますが、しかし、また家族は、ハナコと幼い弟のみをアメリカに戻す辛い決断をします。第2次世界大戦終了後、日本で暮らさなければならなくなった日系アメリカ人の一家を描く歴史物語です。

 

物語はハナコという子どものみずみずしい視点から語られていますが、強制収容所での日々、欧州戦線で勇敢に戦った日系人の442部隊、原爆投下後の広島の惨状、日系人の市民権回復生涯をささげたウェイン・コリンズ・・・など、戦中から戦後にかけての歴史が記されています。また、ハナコと戦災孤児キヨシとの関係も。

戦後75年の本年、コロナ禍の惨憺たる現状で終わろうとしていますが、改めて、本書を読むと、戦争で二つの祖国に翻弄される史実を知ると共に、その中で懸命に生きる市民の強さが心に刻まれます。2020/12/06 

2020年12月5日土曜日

保健室経由、かねやま本館。

おはようございます!本日は、

『保健室経由、かねやま本館。』松素めぐり著(講談社)です。

・・・ずっとクラスの人気者として生きてきた中学生の佐藤まえみ(通称:サーマ)が主人公。

父親の異動に伴い、夢の東京生活が始まりました。しかし、東京生活になじめなかったのか、兄の慈恵は突然不登校に、サーマも東京でもうまくやっていけるって信じてたけど、「サーマって、なんていうか……ちょっとしんどい」と、仲良しグループにはじかれて・・・。

学校に行きたくないけど、両親に心配されるから休みたくもない。葛藤しながら保健室に向かい、扉に手をかけようとした瞬間、「ちょっとちょっと、あんたはこっち!」と手招きしてきた白衣の銀山先生に導かれ、いぶかしみながらも保健室の隣の「第二保健室」で休むことになります。

その地下にあったのが、中学生専門の湯治場!「かねやま本館」でした。

銀山先生って何者? かねやま本館って何? 温泉にはどんな効能が?「疲れたら、休んでもいいんだよ」って、場所の出現です。

そろそろ湯治場が欲しくなる季節になりましたが、with コロナの現状下、こんな作品を紹介してみました。学校の保健室が温泉の入り口になっているというおもしろい設定のファンタジー。中学生のそれぞれの悩み、クラスの雰囲気や自分の立ち位置、空気を読んだり顔色うかがったり、友達との距離感だとか。そういう学校生活のリアルが、とても丁寧に繊細に描かれています。

「疲れたときは、しっかり休息する。おいしいものを食べる。元気が出たら、またがんばる。その繰りかえしで、人は生きていけるのさ」と銀山先生の言葉。物語そのものが良質な温泉のようにじわじわ心に効いて、ほぐしてくれます。お楽しみください。 

2020年12月4日金曜日

晴れ、時々くらげを呼ぶ

おはようございます!本日は、

『晴れ、時々くらげを呼ぶ』鯨井あめ著(講談社)です。

高校2年生の越前亨は、感情の起伏が少なく、何に対しても誰に対しても思い入れを持つことがあまりありません。

父親を病気で亡くしてからはワーカホリックな母と二人で暮らしです。

父親が残した本を一冊ずつ読み進めています。亨は、売れなかった作家で、最後まで家族に迷惑をかけながら死んだ父親のある言葉に、ずっと囚われていました。

図書委員になった彼は、後輩の小崎優子と出会います。彼女は毎日、屋上でくらげ乞い!をしているのです。

雨乞いのように両手を広げて空を仰いで、「くらげよ、降ってこい!」と叫んでいます。

くらげを呼ぶために奮闘する彼女を冷めた目で見、距離を取りながら亨は日常を適当にこなしていましたが、8月のある日、亨は小崎が泣いているところを見かけます。

そしてその日の真夜中、クラゲが降ってきたのです。はやる気持ちを抑えられず、亨は小崎のもとへ向かいますが、小崎は「何の意味もなかった」と答えます。納得できない亨ですが、いつの間にか彼は、自分が小崎に対して興味を抱いていることに気づきます。

若いけれど弾けるような力もなくてモヤモヤを抱えている高校生の、やさしい抵抗やちょっとの成長が描かれていて、なんとも言葉にならない、言葉にして割り切れない高校生たちの気持ちが伝わってきます。

空を見上げてくらげを呼んでみたいこともありますよね。

2020年12月3日木曜日

アメリカン・ボーン・チャイニーズ

おはようございます! 本日は、

『アメリカン・ボーン・チャイニーズ:アメリカ生まれの中国人』ジーン・ルエン・ヤン (),(花伝社)です。

「アメリカに生まれても、白人に憧れても……やっぱり僕は、中国人として生きていく」。

中国人移民2世としてアメリカに生まれ、白人になりたいと憧れるジン・ワン、台湾出身の親友ウェイチェン、白人高校生ダニー、その「中国人の従弟」チンキー。

彼らがアメリカのハイスクールを舞台に、『西遊記』や「論語」、トランスフォーマーが絡まり合う奇想天外な物語。

自分の偉大さを天界に知らしめようとする孫悟空の民話と、中国人のステレオタイプを集めたような少年のブラックコメディと、民族的アイデンティティに関する3つの物語が語られ、やがてそれらは一つになります。

アメリカ社会の「ステレオタイプな中国人」を確信犯的に描き中国人のアイデンティティを問う、「物語のおもしろさとともに、社会的・歴史的な批評性をも」持つグラフィックノベルです。

移民のアイデンティティ確立を描き、中華系の移民2世が、自身の文化と向き合いつつ自分が誰かを探していく、白人文化に溶け込もうとする中国系少年の成長物語は、移民に関心のある人だけではなく、実は、自分の属性を否定して自分以外の誰かになりたいと思うこともある、私たち自身の物語でもあるのです。ご一読を。 

2020年12月2日水曜日

わたしの島をさがして

おはようございます!本日は、

『わたしの島をさがして』ジュノ・ディアス/作 レオ・エスノサ/絵 都甲幸治/訳(汐文社)です。

移民の子・ロラの学校には、いろいろな国から来た子たちが通っています。ある日、「生まれた国の絵をかいてくる」という宿題が出ます。ロラは島で生まれましたが、赤ちゃんのときにやってきたので、島のことは何もおぼえていません。ロラは困ってしまいますが、島のことを覚えている人の話をきけばいいと思いつきます。

毛布みたいに大きなコウモリ、とまらない賑やかな音楽、頭のサイズ程もあるマンゴー、色彩にあふれる人や家、詩にうたわれるような浜辺――そして、そこには「怪物」がいました。

おばあちゃんにすすめられて、とっつきにくい管理人のミアさんの話を聞きにいくと「怪物」の話をしてくれました。30年!も暴れまわった「怪物」に、人々が立ち向かい、最後はみんなでやっつけたというのです。

最後の見開きには、ロラが描いた島の絵が画面いっぱいに紹介されます。

よくあるモテない現代オタク少年の青春話っぽい冒頭から、まさかのドミニカ共和国を30年近くも支配した独裁者との3代にわたる逞しい女たちと、ふがいない男たちの闘いの歴史へと骨太な展開へと繋がっていく『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』都甲幸治/訳(新潮社)などの小説で知られる本書の作者のジュノ・ディアスは、1968年ドミニカ共和国生まれの作家です。6歳のときに家族で渡米。父親が失踪、兄は白血病を患い、窮乏状態の中で育ちます。皿洗い、ビリヤード台配達、製鉄業などの仕事をしながら、ラトガーズ大学とコーネル大学大学院で文学と創作を学びました。従って、ここに描かれているのは、カリブ海の島国、ドミニカ共和国のことでしょう。

生まれた国の絵を描こうといわれて、楽しいことばかりではなく、「怪物」・・・「独裁」というつらい歴史のことも紹介していることが、この絵本に奥行きを与えています。

悲しい思いをして、何十年も前に離れた祖国に、人々がさまざまな形で向き合い、愛憎相半ばしながらも、思いをつなげていることが、物語を通して伝わってきます。

ちなみに、その「怪物」に対して闘ったドミニカ共和国の人々のことを扱った児童文学に、ドミニカ共和国出身のフーリア・アルバレスの『わたしたちが自由になるまえ』(ゴブリン書房)があります。

絵本・児童文学・小説と、それぞれに手に取って読んで頂ければ・・・。