
おはようございます。今日の一冊は、山の麓の集落に、一軒だけ残っている養蚕農家のお話(写真と文)。私は、真綿と綿の区別がつきませんでした。真綿って、綿の一種だと思っていましたが、そうじゃないんですね。「糸」と「綿」、人と虫との世界へ、どうぞ。
『お蚕さんから糸と綿と』 大西暢夫/著 アリス館 (2020/1/20)
滋賀県と岐阜県の境にある山の麓の集落に、一軒だけ残っている養蚕農家・西村さん。お蚕さんを育て、その繭から糸を取る。それが生糸になり、真綿にもなります。「真綿はお蚕さんの繭、綿は綿花」。養蚕農家の人たちがどのように育て、糸や真綿にしてゆくのか、その過程が分かります。
それは、「田舎では養蚕は当たり前の仕事で、お蚕さんと一緒に暮らしたもんよ。むしゃむしゃと桑の葉を食べる音が今も耳から離れないわ」という生活。「季節の糸」。お蚕さんが食べるものは、桑の葉。春の輝く新緑の葉は、柔らかくいかにも美味しそう。新緑の桑の葉は柔らかいから、柔らかい糸を吐き出す。それは、和楽器の弦に使います。秋に近づくに連れ、葉は硬くなっていく。そうなると吐き出す糸も硬くなっていく。秋の糸は着物などの糸に使います。そして、糸が引けないような崩れてしまった繭が真綿になります。
西村さんは、12月に入ると、紅色に染めた一升の餅を持って、虫供養のために近所のお寺に行きます。「私たち一軒だけになってしまったけど、昔は大勢の人たちが供養に来ていたの。だって羽ばたこうとする一歩前で、人の手によって命を止めてしまうからね」。養蚕農家にとって供養は欠かせません。たとえ蛾の命であろうとも、その上に人の営みがあります。
人間本来の生活の営みや、生き物の命を衣食住にいただいていることがよく伝わってきます。
※大西暢夫(おおにし のぶお)さんは、写真家、映画監督、作家、記者。岐阜県揖斐郡池田町で育つ。著者に、『おばあちゃんは木になった』(ポプラ社:第8回日本絵本賞)、『僕の村の宝物』(情報センター出版局)、『ひとりひとりの人』(精神看護出版)、『ぶた にく』(幻冬舎エデュケーション)(第59回小学館児童出版文化賞/第58回産経児童出版文化賞 大賞)『ここで土になる』(アリス館)などがある。