2020年10月8日木曜日

「つちはんみょう」の絵本


 おはようございます!本日は、『つちはんみょう』(舘野 鴻/著・イラスト 偕成社)を紹介します。

ツチハンミョウは非常にマイナーな昆虫です。「道教え」として知られる美麗な「ハンミョウ」とは異なり、地味で目立たない控えめな虫です。

その繁殖方法は独特で、4000個の卵から生まれる体長1ミリにも満たない小さな幼虫は、寄生先となるハナバチの巣にたどりつくため、いろいろな虫にとりついていきます。わずか4日間という寿命の中、幼虫たちは種の存続のために決死の旅をします。

春に卵から孵化した幼虫は一斉に花に上り、そこでハナバチの仲間にとりつき、ハナバチの巣内で花粉団子やハナバチの幼虫を食べて成長し、変体し、成虫になります。

そして、成虫は春先、小さなくぼみを掘ってそこに産卵し、孵化した幼虫は一斉に…という、ハナバチ頼りの旅を繰り返します。

大量の卵を産み、それが孵ると小さな幼虫となってハナバチが飛んでくるのを待ち、うまくハナバチの体にすがり付けたら、ハナバチの巣に連れて行ってもらいます。ツチハンミョウの幼虫は、そこでハナバチが自分の幼虫のためにため込んだ餌を横取りし、しかも、同類が複数いると、それを殺して自分一匹だけで餌を独占して成長します。

登った花の上など外では無関心な幼虫同士が、運ばれた先のハナバチの巣内になると殺し合いを始めるのです。

普段あまり気にも留めない小さな虫から、生きることの意味について、考えさせられます。小さな命の大切さ、虚しさ、生き残る命の裏に、犠牲となる小さなカズ多くの命のことなど・・・。

細密描写で描かれた科学的な絵本です。本書は、筆者自身の手で飼育や観察、撮影を行い、それを元に描写しました。

無垢で勇敢で、美しく儚い虫たちへの著者の想いが詰まった一冊です。 おススメ。