おはようございます。本日の紹介は、『ギフト ぼくの場合』(今井恭子/作 小学館)です。どうぞ、ご一読ください。
小6の主人公・優太は、ギターに惹かれているにもかかわらず、二つの理由でその気持ちを抑えこんでいました。ひとつは経済的な理由で、もうひとつはギターの弾き方を教えてくれたのが、家族を捨てた父だったからです。
父が愛人との暮らしを選んで両親が離婚したのは3年前です。それを知った優太は、ギターの弾き方を教えてくれた父への憎しみを込めて、かつて買ってもらったギターを壊しました。
父は借金を抱えているとかで、養育費の振りこみも滞り、母は町工場の事務室でのパートの仕事に加え、深夜までコンビニでアルバイトをして、優太と妹の美咲との暮らしを支えています。
だから優太はギターがほしいとは口にできません。小学校の文化祭に向けて参加しているバンドではリコーダーを吹き、ギターのうまい水谷が上手に演奏するのをいつも横で聞いていました。
そんなとき、母と優太は打ちのめされます。小2の美咲が盲腸で死んだのです。妹を失ってはじめて、優太は自分がどれだけ妹の存在に救われていたかを実感します。
ある日優太は、ジョニーという大きな白い犬と飼い主に出会います。犬が飼えない妹が、遠回りして下校のとき立ち寄り、ジョニーとのひとときを楽しんでいたと飼い主から教わります。
優太の暮らしは、バンドでギターを弾く水谷がけがをしたことにより、少しずつ変わっていきます。代役が必要だといわれたとき、優太はギターを持っていないのに、思わず自分が弾けると名乗り出たのです。
それまでギターが父につながっているとして忌み嫌っていたのですが、先生が用意してきたギターを弾いたら、もう後戻りはできなくなりました。
先生も優太には「絶対音感というギフト」があると断言します。・・・そして、コンサートは大成功します。
ふつうの流れであれば、ギター演奏を褒められた優太が、これからもギターを弾き、やがてギタリストを目指す展開となるのでしょう。ところが、優太が母の仕事先を見学したことを契機に考えたのは、自分に向いているのは、ものを作ることだということでした。
本書は、音楽が重要な要素とはいえ、そのおかげですべてがうまく収まり、大団円を迎えるという作品でありません。
優太の「ギフト」が活かされないのはもったいないと思いましたが、彼が選ぼうとしているのは、厳しい環境で生きていくための現実的な道なのです。
救いは、彼がギターに惹かれる気持ちをもう無理に押し殺そうとはせず、将来は「ギターをつくる仕事をめざそう」と考えていることです。
一体どれだけのギフトが、経済状況や家庭事情によって潰えていくことでしょうか。先生が「日本は貧しい」と叫びたくなった気持ちはよく分かります。主人公の前途もさぞかし多難でしょう。「自助」と「公助」について考えさせられる一書でもあります。
ギフト ぼくの場合・・・、本書は「貧困家庭の少年が自分の将来の夢を見つける物語」と簡単にはくくられない内容の物語です。
