2020年10月4日日曜日

願いごと

おはようございます!本日は、子どもたちの目をつうじてさまざまな社会の問題を描いた一作です。ご一読ください。

『さよなら願いごと』大崎梢光著 光文社

章ごとに視点人物が異なっています。本書は、「願いごと」や占いやおまじないに頼る子どもから連想される「ほのぼのとした」「かわいらしい」とは程遠く、ある土地を舞台とした犯罪事件が掘り起こされ、人々の利害関係も浮かびあがるものです。

1章「願いごとツユクサ」は、小学校4年生の琴美の夏休みを扱います。琴美の祖父1人ではせわしきれない畑に、佐野隆なる青年が不定期に手伝いにきます。彼は子どもの相手も嫌がらず、また彼らの近辺で起きたちょっとした出来事の、謎解きを軽々tこなしていきます。

2章「おまじないコスモス」は中学3年生の祥子の淡い恋を描きます。祥子はクラスメートの土屋拓人にひそかに思いを寄せていました。そして彼と立ち話ができたことを幸運だと喜んでいたのですが、じつは拓人は祥子の母と自分の父の不倫を疑っていて、その件で祥子と話したがっていたのです。もっとも、後からわかったのは祥子の母と土屋の父とは幼なじみで、別の幼なじみの少女がかつて殺された事件のことで、いま新聞記者をしている土屋に母が調査への協力を求めていたからだとわかってきます。

3章「占いクレマチス」は、県立高校2年生の沙也香の部活動が中心です。沙也香の所属する新聞部では、毎年文化祭で意欲的な発表をおこなっています。今年のテーマが決まらないなか、建設途中でストップしたままの廃ホテルの取材が発端となって、彼らは二つの町の争いの背景にあった問題を探りはじめます。ところがこの調査は、白沢町で30年前に起こった殺人事件と、その犯人とされた人物に関する関係者の食い違う見方を掘り起こすこと結果となりました。そして沙也香の祖母──れっきとした占い師──のもとを訪れた関係者の1人の話もまた、意外な事実を伝えます。

そして、4章「花をつなぐ」。過去の殺人事件が通奏低音となり、それがじょじょに表面に浮かび上がり、最後は、過去をもみ消そうとする人物による犯行にまで至ります。そのため高校生4人組に加え、1章の琴美たち、2章の祥子たちも巻きこまれます。沙也香は心のなかで何度も笹舟を流し、「真実が明らかになりますように。不運に見舞われ、今はもうこの世にいないふたりのもとにも、それが届きますように」と願っていましたが、最後にそれが叶ったといえます。

本書で、過去と現在のつながり、そして子どもの年代ごとの気づき方から生活圏のちがい、さらに忖度の絡んだおとなの行動まで、さまざまなものが見えてきます。