2020年10月29日木曜日

カッコーの歌

おはようございます!本日は、10/21に紹介した『嘘の木』の作者・フランシス・ハーディングの

『カッコーの歌』(東京創元社)です。【英国幻想文学大賞ファンタジー長編部門賞】作品です。

舞台は、1920年のイギリス。第一世界大戦で戦死した兄のいる家族の長女テレサ(「トリス」の愛称を持つ11歳の少女)がグリマーと呼ばれる沼地に落ちるという事故から、このファンタジーは始まります。

目覚めた彼女は記憶を失っていました。

「あと七日」とトリスの耳元で囁く声、異常な食欲。どれだけ食べても空腹でたまらず、真夜中に部屋を抜け出して林檎の木のまだ青い実や落ちて腐りかけの実まで食べてしまいます。

日記は何者かによって破かれており、ベッドには毎晩のように小枝や枯葉が落ちて、しまいには、ただの人形がまるで生き物のように口をききます。

そして、彼女は9歳の妹・ベンには「偽物」と糾弾され続けます。

カッコーの托卵のように一家に送り込まれた「偽トリス」である主人公が、「自分とは何か」と問い、「トリスになりたい」と願い、やがて「別の何か」として生きていこうと決する姿が、幻想的なイメージと強い緊迫感で描かれていきます。

物語は、家族の問題、「偽トリス」を作った人物、避難し都市に集まり隠れる不思議な生き物たち、・・・背後に暗躍する黒幕の登場と、スリリングな展開をみせます。

物語の終盤、黒幕に戦いを挑む主人公の上に降り積もる雪の光景が圧巻です。 このシーンに出会うためだけでも、本書を読み続ける価値があります。お楽しみください。