2020年10月18日日曜日

がろあむし

おはようございます!本日は、10/8に紹介した『つちはんみょう』の作者・舘野 鴻(たての ひろし)さんの新作絵本

『がろあむし』舘野 鴻/著(偕成社)です。

がろあむしは、生涯を暗黒の地下の砂礫のすきまで過ごす地味な虫です。肉食だから、他の昆虫やミミズ、ムカデなどを食べ、オスと出会って交尾してそのオスを食べます。産卵して次の世代を準備したところでメスはクモの餌食になって果てます。その生涯が、緻密に描かれています。

この絵本には、50種類の微細な虫たちが登場します。砂礫はすきまがたくさんあって、生態系が成立しています。闇の中だから普通は私たちには見えないのですが、そこのところを作者は可視化してくれます。

本書は扉を開くと、まず、高空からの鳥瞰図。降下して畑などの細部がみえたかと思うと、次のページを開くと、その下に広がる、がろあむしたちの生息する地下世界に入って行きます。終わりの方では、再び、地下を離れ、鳥瞰図が描かれるのですが、その風景はすっかり変わっていて、私たちは、がろあむしたちの生と死のドラマが織りなす地下で数年過ごしたことが分かります。

本作は、地下の暗黒世界に広がる宇宙と、そこに生きる小さな虫の大きな一生。そして、おなじ地平で変わりゆく人間たちの社会を濃密に描き出した傑作絵本です。どうぞ、一度はご覧ください。

ちなみに、がろあむしは標準和名「ガロアムシ」。日本の中禅寺湖で最初に発見したフランスの外交官ガロア氏にちなんで1914年に名づけられました。孵化した幼虫は成虫になるまでに5 - 7年かかるそうです。

私は、この虫の存在を、かつて、20年前くらいに生徒さんから教えられ魅了されました。彼の綿密に調べあげ、丁寧に記載された研究ノートに驚嘆した記憶があります。当時は、学園のある飯能の奥の方にも生息していたことが分かりました。ガロアムシは、一般人どころか研究者や愛好家でも、まずあまりお目にかかることがない昆虫だそうですから、改めて本当にすごいことだったのだなあと、本書を手に取りながら、そんなことまで思いだしました。