2020年10月1日木曜日

ワシントン・ブラック

おはようございます!本日は、一人の少年の数奇な運命と世界を股にかけた冒険、自我の目覚め、人生の旅。アフリカ系カナダ人の女性作家による、読む悦びと驚きに満ちあふれた歴史冒険小説です。お楽しみください。

『ワシントン・ブラック』エシ・エデュジアン/著 小学館

「ワシントン・ブラック」とは、主人公/語り手の男性の名前です。奴隷として人生を始め、自由な男として読者に別れを告げる男です。物語は1830年のバルバドスから始まり、その6年後のモロッコで幕を閉じます。人生の中のたった6年間の物語なのに、読み終えるとまるで誰かの一生について学んだような気がします。

1830年、東カリブ・バルバドス島。1歳の黒人少年「ワッシュ」ことワシントン・ブラックは大農園(サトウキビ・プランテーション)に生まれ、奴隷として過酷な日々を生きていました。

身寄りのない奴隷ワッシュはバルバドスの大農場で働いており、ビッグ・キットという女性の奴隷を母のように慕っています。彼女も、ひとりぼっちで頼りないワッシュを可愛がり、時には仕事を肩代わりするなど献身的に面倒を見ています。そんな中農場主が亡くなり、彼の甥であるエラスムス・ワイルドが代わりにイギリスからやってきます。この男の奴隷に対する残酷で非情な仕打ちに自殺をも覚悟する奴隷もいる中、ひょんなことからワッシュはエラスムスの弟であるクリストファー・ワイルド(愛称はティッチ)に引き取られ科学研究の助手となり、ワシントンは難を逃れます。

ティッチから文字や科学の知識を学び、絵の才能も開花させるワッシュ。

しかし、オーナーの弟から特別扱いされたことでワシントンはビッグキットから見放され、オーナーやオーナーの従弟からの暴力のターゲットになります。やがてある事件を機に二人で作った気球で島から脱出し、北極をめざしますが……。

ワッシュは、絵を描くことへの情熱が目覚め、それは彼の運命を大きく変えます。

そこまでの紆余曲折や、登場人物が皆特徴的で、少年は虐げられることもありつつ、様々な人から愛を学んで成長していく、語りがとても魅力的な物語です。ご一読を。