2020年6月30日火曜日

予告された殺人の記録


おはようございます。今日は、6/7、6/14に登場した29期生の牛田悠貴さんの「現代ラテンアメリカ文学・紹介」の第3弾です。ありがとう!うっしー。皆さん、どうぞご覧ください。

『予告された殺人の記録』ガブリエル=ガルシア・マルケス/著 新潮文庫

コロンビアの作家、ガブリエル=ガルシア・マルケスの中編小説、『予告された殺人の記録』を読みました。なんだか推理小説っぽいタイトル。

 “自分が殺される日、サンティアゴ・ナサールは、司教が船で着くのを待つために、朝、五時半に起きた。(8ページ)”

こんな一文から始まります。さぁ、犯人は誰かな?なんて、頭を働かせてる人もいるかも知れません。しかし!なんと20ページ目くらいであっさりと犯人は分かってしまうんです。推理小説ではないのか!!

残り120ページくらい、この殺人についての色々な人たちの証言が永遠と続きます。ナサールとはどんな人だったのか。なぜ殺されなくてはならなかったのか。どうして未然に防ぐことが出来なかったのか。

まあそれだけではなくて、合間合間に興味深い別次元(?)のエピソードも入っているのですが...。それでも、やはり物語の本流は、このナサール殺害に関する色々な証言ということになります。

さて、ガルシア・マルケスという作家の凄さのひとつは「語り」であると言われています。
この小説では、ナサールの親友でもあり、その彼を殺した人物の親戚でもある「わたし」が語り手です。

「わたし」が、様々な人物からナサールの死に関する証言を集めていく中で、読者もその事件の全貌が掴めてくるのですが、同時に不自然なこともいくつか浮かび上がってきます。

そのうちのひとつが、それがナサール本人以外のほとんどの町の人には、あらかじめ「予告された殺人」だったことです。犯人はナサールを殺す前から「ナサールを始末する」とありとあらゆる周囲の人物に言いふらしていました。

にも関わらず、それは止められることなく実行されてしまうのです。なぜか。

それを考えるという点では、ある意味推理小説的でもあるのかも知れません。でもそれを考えるというよりも、とにかく語りの中に没入させられてしまう感覚を楽しむのが、まずおすすめです。

挫折ポイントをもし挙げるとするなら、人物名の複雑さと、その多さだけかなという感じです。でも、あまりしっかり覚えようとしないでも楽しめると思います。140ページほどの中編でこれくらい揺さぶられるのはすごいです。

ガルシア・マルケス本人も「自身の最高傑作である」と言っているんだとか。でも納得。

世界的な評価からすると『百年の孤独』が代表作とされていますが、そっちは中々分厚くて読むのに体力が必要かも知れません。「分厚い本はちょっと…」っていう人は、こちらの『予告された殺人の記録』から入るのがおすすめです!是非!