
おはようございます。今日は、ユニークな視点からのLGBTQとYAの成長を描いた本を紹介します。どうぞ、ご覧ください。
『兄の名は、ジェシカ』ジョン・ボイン/著 原田勝/訳 あすなろ書房(2020/4)
本書は、性別に違和感のある17歳の兄と家族のありようを13歳の弟の目線で語る独特な物語です。
4歳年上のジェイソンは、13歳のサムの自慢の兄です。おだやかでやさしくて、忙しい両親にかわって、小さい時から困難を抱えたサムの面倒をよくみてくれました。サッカー部のキャプテンで、学校ではみんなの人気者。だけどこのごろ、少し様子が変わったみたいです。
ジェイソンはある日、自分はトランスジェンダーであり、男であることが耐えられない、と家族の前で告白します。大好きな兄の変化にサムはとまどい、閣僚の母親、その私設秘書を務める父親はうろたえます。両親は子どもたちを愛しているのは間違いありませんが、LGBTQは「治すべき病気」という偏見から自由ではありません。政治的野心のため世間体を取り繕うことにも余念が無いです。そんな家族の間で悩み苦しむジェイソンは家を出て…おりしも現首相が退任し、サムの母親は有力な次期首相候補になるはずだったのですが、家を離れたジェイソンのことが首相候補の母への攻撃材料となり、マスコミに取り上げられ、・・・。
ジェイソンにはローズおばさんという理解者が現われ、世間に追い詰められたギリギリの状況で父母が選択した判断により彼は受け止められ、そして、サムも、最終的に「兄さんの名は、ジェシカだ」と言えるようになります。
主人公は、政治的に多忙な両親に放置され、オペア(家事や子守を手伝う住み込みの留学生)や兄により世話をされてきた難読症でもある弟のサムです。彼は、サッカーが上手で人気者、憧れのかっこいい兄への強い依存で生きてきました。それだけに、その兄が、髪をポニーテールにして、女らしい服装にしているのを嫌がりますが、彼も彼自身の初恋も含めた成長を通して、変わっていきます。
生物学的な性、社会的な性、そして本人が自覚する性の問題を、何よりも、身近な人、愛する家族が心と身体の不一致の問題を抱えて悩み苦しんでいると知った時、私たちはどうすればいいのか?という問題を、わかりやすく、誠実に、そして、ユニークな存在であるサムの目線で、真っ正直であるがゆえに痛烈な批評も生む、彼のコミカルな口調で、語られています。