おはようございます!本日は
『雲を紡ぐ』伊吹有喜(文藝春秋)です。
羊毛を手仕事で染め、紡ぎ、織りあげられた時を越える布・ホームスパンをめぐる、親子三代の心の糸の物語です。
電機メーカーの研究員として働く父と、私立中学校で英語教師をしている口うるさい母のもとに育った高校生の美緒は、いじめが原因で学校に行けなくなって一ヶ月経ちます。
美緒が唯一ほっとできるのは、初宮参りの際に父方の祖母から送られた赤いホームスパンのショールでした。ところが、このショールをめぐって母と口論になり、母にそのショールを隠され、彼女は衝動的に、ショールを作ってくれた盛岡の工房へ向かって新幹線に飛び乗ります。
美緒は、ホームスパンの職人である祖父とともに働くことで、職人たちの思いの尊さを知ります。
一方、美緒が不在となった東京では、父と母の間にも離婚話が持ち上がり……。とてもみじかい「家族の時間」が終わろうとしていました。
壊れかけた家族は、もう一度、ひとつになれるのでしょうか?
時代の流れに古びていくのではなく、熟成し、育っていくホームスパン。その様子が人の生き方や、家族が織りなす関係に重なり、物語は展開していきます。
本書は、美緒だけでなく、家族全員の成長物語で、盛岡の自然や宮沢賢治などの童話も登場し、立ち止まって、自分を見つめて、考えることの大切さを味あわせてくれるものです。
