
おはようございます!本日は、いま(だからこそ、特に)話題(考える材料)となって来ている梨木香歩さんの新刊を紹介します。ご一読、ください。
『ほんとうのリーダーのみつけかた』梨木香歩/著 岩波書店(2020/07/10)
本書は、2015年『僕は、そして僕たちはどう生きるか』の文庫化にあたり企画された書店での若い人向けの講演録を基にした「ほんとうのリーダーのみつけかた」、他2編は『図書』に掲載。(「今、『君たちはどう生きるか』の周辺で」「この年月、日本人が置き去りにしてきたもの」)で構成された、約70ページの短い作品です。
しかし、このタイトル、ちょっと気になるではありませんか。ほんとうのリーダー?
はじめに言ってしまうと、それは、・・・ほんとうのリーダーとは自分自身の中にいます。「自分で考えて行動する」「自分の気持ちにふさわしい言葉を丁寧に選ぶ」、もう一人の自分なんですね。
それは、同調圧力を掛けて思い通りに操ろうとする(偽物の)「リーダー」に従うのではなく、自分を知り、自分の味方となり、自分の側に立って考えてくれる、もう一人の自分を見つけることなんですね。
そして、「チーム・自分」として、判断し、行動すること。
様々な人、文学作品、映画などからの言葉や場面を見聞きして梨木さんが感じたことを、聞き手(読者)に投げかける形で話が進みます。特に錦織圭とジョコビッチとのテニスの試合の報道の仕方の違い(日本とイギリス)がなるほどなあ、です。
人は群れて生き延びて来ました。群れて生きる人の結束を固めるために、多分、同調圧力や情報操作が行われて来ました。しかし、その同調圧力に屈しない力を持つこと、情報をそのまま鵜呑みにせず「えっ?」と考えること。そして、客観的に自分を理解した上で、自分を信頼し、そういうもう一人の自分をリーダーにすること。そして、いざという時に、「越えてはいけない一線を決める」こと。これらは本当に難しいけれど、模索し続けることにも意味があるのですよね、・・・人間として。
鶴見俊輔さんから著者が聞いた戦争中の捕虜試し切りの話や、戦後の復興期に科学の辞典を作った編集者の言葉も心に響きます。
本書は、世上よくある「リーダー論」ではなく、私たちが置き去りにしてきた!(と著者が考える)「ヒューマニズム」を再考する本なのです。