おはようございます!今日は、〈世界のはての島〉「世界遺産の島」に、かつてあった人々のくらし。きびしくも美しい自然と、失われた文化を伝える美しい絵本です。
『セント・キルダの子』ベス・ウォーターズ文・絵、岩波書店
スコットランドの北西、セント・キルダ諸島。荒れる海に囲まれ、〈世界のはての島〉と呼ばれるこの場所で、人々は生きるための工夫をこらし、独自の文化を作り上げてきました。しかしそんなくらしは、1930年を最後に失われてしまいます。
本書は、自然へのおどろきと、その島で過ごしたなつかしい日々を、5歳で島をはなれた少年の目をとおして描いたものです。
そこは、北大西洋に浮かぶ小さな島で、何百年にもわたって自給自足のくらしをおくり、独自の文化を守ってきた人たちがいました。彼らが島をはなれなければならなかったのは、外の社会とつながりをもちはじめたからです……。
セント・キルダには少なくとも2000年間、人が暮らしてきた歴史がありましたが、人口はおそらく180人を超えることはありませんでした。(1851年以降は100人を切りました)。1930年、4島のうち唯一の有人島であったヒルタから住民全体が避難しました。夏のあいだは科学者たちや保全作業員、ボランティアがやってくるものの、現在、唯一1年を通じて島に暮らすのは、防衛担当者だけとなっています
群島全体を所有するのはナショナル・トラスト・フォー・スコットランドです。1986年、スコットランドに5箇所あるUNESCO世界遺産の1つとなり、セント・キルダはその自然と文化資質のため、世界でも数少ない地位を保持しています。
島の立地や自然、人々のくらしぶり、文明との軋轢、島民たちが離島にいたる経緯、少年のその後が、絵と簡潔な文章で描かれています。
大胆な色使いと構図が、荒れた海に浮かぶ島々の神々しさをとらえ、モノプリント版画の素朴でやわらかいタッチが、きびしい自然の中で営まれていた人々のくらしを暖かく描きだします。それは、人間本来のくらしとはなにかを問いかけてきます。
巻末には、取材のために島を訪れた作者、ベス・ウォーターズさんの取材スケッチがあり、今の島の様子を伝えてくれています。
