おはようございます!今日は、夫を突然亡くしたアイルランドの主婦ノーラが、子どもたちを抱え、二十年ぶりに元の職場に再就職し、同僚の嫌がらせにもめげず、娘たち息子たちとぶつかりながらも、ゆっくりと自己を立て直し、生きる歓びを発見していく物語です。YA諸君、たまにはこういう「渋い!」読み物もいかがでしょうか。
『ノーラ・ウェブスター』コルム・トビーン/著 新潮社
ノーラが夫を急病で失ったのは40代半ば。4人の子どもがいます。貯金はありません。
この家族が暮らすのはアイルランド南東部の小さな町です。町中がお互いを知っているような、小さな田舎町です。
作者の母と重なる主人公ノーラは、夫の死後、毎日、予告なしにやってくる弔問客に疲れて、ダブリンに移ろうかと考えます。ところが、子どもの時から知っている女子修道院長は、「心配ないわ……町があなたを守ってくれます」と言います。
結婚する前に11年間働いていた、町内の会社から、再就職の声がかかります。現社長も、その夫人も、先代社長も、ノーラが若いころからの知り合いの仲です。
しかし、出勤してみると、直接の上司は、10代のころノーラがいじわるをした、まさにその女性でした。当然、お返しがはじまります。まじめで有能なノーラの像が、かえってここで急に活き活きとしてきます。
ノーラは、自分の悲しみを人に訴えない生きかたを選び、人に憐れみを乞わない姿勢を通してきました。
亡夫は、中高一貫男子校の教師でした。長男ドナルは父親を尊敬し、父のようになりたいと思っていました。その父を失って以来始まった、彼の吃音は、別の寄宿制高校に転校すると、自然に治まります。この小説の作者となるのは、彼、ドナルです。
作者の母は、1921年生まれ。この物語の背景は、1960年代の終わりから70年代のはじめにかけて、ということになります。田舎の町が、そこに住む人を再生させる力を保っていた時代です。
しかし、ここに描かれた、「平凡な人生」のおどろくべき輝き――は、強固な普遍性を持って私たちの人生を照らしています。
