本日は、2017年第63回小学館漫画賞受賞作品、累計発行部数2,100万部超の『約束のネバーランド』を英米文学者が学術の立場から読み解こうと試みた考察本です。お楽しみください。
「英米文学者と読む『約束のネバーランド』」戸田 慧/著 集英社新書
漫画『約束のネバーランド』、この漫画の設定では、・・・昔、「鬼」は人間を襲って食べる生活をしていましたが、当然、鬼に服従する人間も、鬼を憎み武装して食われた数以上の鬼を殺す人間たちもいて、終わりのない殺し合いと果てのない恐怖が続いていました。それに互いが嫌気を指していた時に、人間側から「人間は鬼を狩らない、だから鬼も人間を狩らない。お互い世界を棲み分けよう」という提案がなされました。この『約束』が全ての始まりで、これによって世界は人間の世界と鬼の世界の2つに切り分けられ、2つの世界は断絶することになりました。
主人公のエマたちの先祖は、実は、その時に「鬼側の世界に置いて行かれた土産」で、鬼は約束を守り「農園で人間を管理、養殖を続ける」ようになっていました。
物語は、主人公達が鬼が運営する、「人間を食用の家畜として飼育する」グレイス=フィールドハウスという農園(表向きは孤児院)から始まります。
この漫画は、その孤児院で育てられた子ども達が過酷な運命に抗って生き抜いていく物語です。
その意表をつく展開や複雑な頭脳戦の背景には、多彩な文学作品や宗教に関する膨大な知識が踏まえられていることが窺えます。
本書は、そんな『約束のネバーランド』を、英米文学者である著者が専門の学術的立場から読み解こうと試みた考察本です。それはまた、この漫画を通した英米文学・文化への入門書ともなっています。そして、それは同作の名場面を豊富に引用しながら、数々の謎の核心に迫った興味深いミステリーでもあるのです。
本書の主な内容
・「約束のネバーランド」というタイトルの真の意味とは?
・謎を解く手がかりを与えてくれる、いくつかの英米文学作品
・階級、女王、狩り……鬼の社会と似た特徴を持つ国は?
・「原初信仰」とユダヤ・キリスト教
・鬼の言葉とヘブライ語
・ジェンダーから見た『約束のネバーランド』の新しさ ほか
例えば、「第1章 イギリス文学・文化とのつながり」は、こんな内容です。
1.J.M.バリー「ピーター・パン」~「約束のネバーランド」というタイトルの意味~
2.ルイス・キャロル「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」~白ウサギ、レウウィス、チェス~
3.十九世紀のロマン派作家たち ~バイヨン卿とバイロン卿~
4.J.R.R.トールキン「指輪物語」 ~エルフと鬼~
5.鬼社会とイギリス社会 ~階級、キツネ狩り、女王~
