おはようございます!今日は、6/6、7/10、7/26、9/24に続いて1期生の須藤倫子さん、5回目のご登場。須藤(旧姓・小迫、通称:ちゃこねえ)さん、ご寄稿、本当にありがとうございます!皆さん、どうぞ、この絵本、ご覧ください。
『わたしたちだけのときは』デイヴィッド・アレキサンダー・ロバートソン文 ジュリー・フリット絵 横山和子訳 岩波書店 2018年
BLM(ブラック・ライヴズ・マター、アフリカ系アメリカ人に対する警察の残虐行為に抗議して、非暴力的な市民的不服従を唱える組織的な運動)で揺れる米国にくらべ、地続きのカナダはもっと人権が守られているイメージがある。移民大国、多民族共生の先進国と言われ、米国から良心的兵役拒否の若者を受け入れたり。
でもそんなカナダにも差別はあって、古いものではかの『赤毛のアン』シリーズ(NHKで最新版の放映が始まったところ)、全編を通じてフランス系住民を二等民族のように描いている。
そして何より先住民に対する厳しい差別の歴史。
カナダには極北地方のイヌイット(エスキモー)諸部族の他にもファーストネーションと呼ばれる先住民族がいて、固有の言語だけでも50種以上を数えるのだが、政府は彼らの文化を国策として(!)百年以上にわたり破壊し続けていた。たとえば子どもたちを親元から引き離し専用の寄宿学校に入れ、部族の母語を禁じ英仏語を強制、キリスト教の信仰を押しつける。被害にあった子どもはのべ15万人、虐待によって少なくとも6000人が死亡している。苛酷な同化政策の歴史について政府が公式に謝罪したのは、やっと2008年のことだ。
カナダ総督文学賞を受賞したこの絵本は、これまでも先住民族をテーマに多くの作品を発表してきた作家と画家が、老婦人の回想として同化政策寄宿学校を描いたもの。
「おばあちゃんの服は色あざやかで虹から作ったみたいにきれい。どうしていつもそんなにきれいな服を着ているの?」孫娘の無邪気な質問に祖母は静かに語る。
好きな服を着ていた小さいころ、家から無理やり遠くの学校に行かされて暗い制服を着せられたこと。でも監視の目のない「わたしたちだけのときは」地面に寝転がって赤や黄色の葉っぱを服につけ色とりどりにしたこと。だから今は好きな時にきれいな服を着ているのだと。それはとてもいじらしい抵抗。長く長く伸ばすのが誇りだった髪の毛は耳元でばっさり切り落とされた。「わたしたちだけのときは」野の草を編み込んで背中から垂らして代わりにした。
文化を破壊されることは自尊心を打ち砕かれることで、その傷は何十年経っても痛み続ける。この政策は文化的ジェノサイドだったのだ。先住民族への差別は今も残り、失業率は高く収入は低く、平均寿命はカナダ全体のそれに比べ20年短い。
沖縄や北海道、朝鮮半島や台湾で日本政府が行なったこと、そして今も謝罪はしていないことも頭に置きつつ、読んでみてほしい。
